「そうです。もし、今回の戦いを勝利に導かれても……それでは、生涯不敗を誇る経歴が笑い者になりましょう」

 まだ分かっていない。死ぬかどうかの瀬戸際の時に、何を言い出すのかと俺は鼻で嗤った。

「何を、馬鹿馬鹿しいことを。このまま正々堂々と向き合えば、敗北確実の戦いを前にして、万が一勝利した時のことを考えているのか。おめでたい頭だ」

 急拵えで連れて来た部下たちは、まだこの状況を掴み切れていないようだ。ここで正々堂々戦っても、全員で死のうと言っているに等しいということを、まだ理解していない。

 ……何が笑いものだ。そう言うなら、喜んで道化になってやるさ。

 それで……国を守れるのだとしたなら。

「閣下。しかし……」

「俺たちがここで敗れれば、国民は数多く死ぬだろう。残った多くは敗戦国の民として奴隷となり、王族貴族も見せしめのために公開処刑だ」

「……それは」

「平和ボケした貴族たちとて俺が死んだと聞けば、慌ててここまで軍勢を率いてやって来るだろう。俺の死がまず必要な事だという理屈は、理解することが出来たか?」

 敗戦国の国民は、地獄を味わう。