「よく聞け。開戦早々、俺は死ぬことになる」

「は?! なんと仰いました!?」

「閣下、一体何を?!」

「そうです! まだ、確かに我が軍が不利ですが、勝敗が決まった訳ではないでしょう!」

 ざわざわと慌てふためき騒ぎ出した部下に、とりあえず鎮まるようにと、俺は片手を上げて制した。

「そう結論を急くな。この絶望的な状況を好転させるには、そうするしかない……それに、語弊があった。実際に死ぬ訳では無い。死んだ振りをするんだ」

「死んだふり……ですか?」

 揃いも揃ってぽかんと間抜けな表情を晒す部下を見て、やはり俺には時間が足りなかったのだと冷静に思った。

 俺がいくら優秀だとしても、優秀な部下に育て上げるには、あまりにも月日が足りない。

「……作戦を立てる司令官が居ないとなれば、敵軍は有利と見て浮き足立つはずだ。油断を誘う。俺は死んだように見せかけて、実のところ死んでいない。居ないと思わせて、すべての作戦は万全を期す。少しでもわが軍の犠牲を抑え、この国を守るためには、まず最初に必要なことだ」

「しかし、閣下。それでは、閣下の名誉が……」