それは、私だって理解していた。けれど、広い庭を剪定しなければならない庭師が、何か落とし物をするなんて、良くあることだ。サムは悪くない。

 何もかも、油断していた私が悪い。使用人に良くして貰っているなど、義母に対しては決して言ってはいけなかったのに。

「座りなさい。ブランシュ……どうすれば良いか、お前には良くわかっているでしょう?」

「……はい」

 私は服が汚れることも気にせず、地面に膝をついた。両手を差し出し、ぎゅっと目を閉じる。

 ヒュンっと風を切る音に、身体が震えてしまった。

 ……怖い。逃げ出したい。怖い。すぐに終わる。怖い。我慢していれば、すぐに……。

 手に鞭を打つ音が聞こえて、義母が十数えるのを待った。

「……使用人は、もっと厳格に躾けなさい。ブランシュ」

「はい……ありがとうございます」

 終わった……私は手のひらにある熱い痛みに悲鳴をあげそうな口を一旦閉じて、義母にお礼を言った。

「帰るわ……わかっているわね? ブランシュ」

「はい。わかっております。ご指導ありがとうございました」