「クウェンティン。私とサムを残して、ここから立ち去りなさい」

「奥様? しかし……」

 私が小声で耳打ちしたクウェンティンは、戸惑っているようだ。けれど、余計な人がここに残れば、彼らにも累が及ぶ可能性だってあった。

 無関係な人を巻き込みたくない。

「良いから、行きなさい!」

 初めて彼に声を荒げて命令した私に驚いたのか、クウェンティンは慌てて頭を上げた。

「奥様……かしこまりました」

 私と庭師サム、そして義母のグレースのみになったその場で、怒声が響いた。

「私がこれを踏んで怪我すれば、どうするつもりだった!? そこの使用人を、お前はどうするつもりなの。ブランシュ!」

「本当に申し訳ありません。お義母様。使用人の粗相は、私の責任です。私が代理で責任を取ります」

 ここで私がこう言わずに、義母にサムを引き渡すことになれば、彼は死んでしまう。

 公爵家出身の義母は、それが許される大きな権力を持っている。

 義母は私にこう言わせるために、使用人の粗相を探していたのだ。