「皆、大丈夫よ。いつも通り仕事に戻ってちょうだい。クウェンティン……大丈夫? 私を守ってくれて、ありがとう」

「奥様。ヒルデガードを殺しましょう。旦那様も、そう望まれるはずです」

 そうだ。夫のアーロンが死なずにここに居れば、きっと私を守ってくれただろうか。

 私は実家で母の亡くなった後だって、何度も何度もそう思った。

 ……母が生きていてさえくれれば、私はこんなことにはならなかったのではないかと。

 けれど、亡くなった人はどんなに強く望んでも、もう戻ってこないと、私は思い知っていた。

 どんな苦境に陥ったとしても、自分でなんとかするしかないのだと。

「とは言っても、アーロン様は今は居ないのよ。落ち着きなさい。ヒルデガード様は勘当されたとは言え、貴族の一員。そんなことをすれば、クウェンティンが罪に問われてしまうわ」

 静かに首を横に振った私に、クウェンティンは悔しそうに呟いた。

「奥様……」