大きな声で騒いでいる男性の声を聞き、私が玄関ホールへと降りれば、そこには背の高い金髪の男性が居た。

 金髪金目で容姿の整った美しい男性だ。ただ、あまり性格が良さそうに見えなかった。大声を出したとても優雅とは言えない横暴な振る舞いが、目に付いてしまったせいかもしれない。

「……あれは?」

「アーロン様の弟、ヒルデガード様です。数年前にあまりに放蕩が過ぎて、先の当主様よりキーブルグ侯爵家を勘当されていたのですが……まさか、今、こちらへ帰って来るとは思ってもいませんでした」

 常に冷静沈着なクウェンティンが帰ってくるはずのないヒルデガードの帰還に動揺していて、心中を表してかその赤い目は揺れていた。

 アーロンの両親は、三年前に事故で亡くなってしまったらしい。ヒルデガードは、その前に勘当されてしまった弟なのだろう。

「どうすべきかしら……彼が勘当されているのは、クウェンティンの言う通りでしょうけれど、アーロン様の実の弟ならば、私なんかよりもよっぽど爵位を継ぐ資格があるはずだけど」