「……奥様。顔色が悪いです。大丈夫ですか? どうか、無理はなさらず、書類仕事などはすべて私にお任せください。奥様はただ今までのように健やかにお過ごしください」

 クウェンティンはまだ歳若いのに有能な執事で、彼に任せておけば間違いないだろうと、彼と知り合って間もない私だってそう思う。

 けれど、だからと言って自分がすべきことを、彼に全て任せてしまうことなんて出来なかった。

 義妹のハンナは、夫アーロンの葬式の日にやって来て私を嘲った。

『ふふっ……まあ、結婚したばかりで、夫が亡くなったの? なんだか、とっても! お義姉様らしいわ……いつでも、エタンセル伯爵家に帰ってらして。お待ちしておりますわ』

 隣に無言で表情を変えず座っていた義母のグレースだって、嫁いですぐに未亡人となった私に、同じような意味合いの言葉が言いたかったに違いない。

 自分たちの苛立ちのはけ口として扱っていた義娘と義姉なんて、裕福な侯爵家に嫁ぎ幸せになるべきではないと思っている。