私は訃報の手紙をクウェンティンより手渡され『一人になりたい』と伝えると呆然としたまま部屋へと戻り、ベッドの上で我が身の不幸を嘆き泣いていた。

「ぐずっ……そんなの……っ……なんの意味もなかった……! 優秀な将軍で、素敵な人だとしても……! すぐに亡くなったら、もう……私のことを幸せになんてっ……してくれないのようっ! お父様の嘘つきー!!!!」

 父に縁談があると伝えられた時を思い出して、私はふわふわの枕にかきついて涙を流してしまった。

 多忙過ぎて、一度も会わないままで結婚式が行われる教会から直接戦地へ向かい、書類のみで結婚を済ませ、その一週間後に妻の私は夫の訃報を受け取った。

 これでは……あまりにも、展開が早過ぎる。

 まだ会ってもいない夫アーロンに先立たれてしまった私が、目が溶けるのではないかと心配するくらいに泣いてしまっても、きっと誰も驚かないだろう。

 だって、これから私はどうなるの? 不安で不安で堪らないわよ。

「……奥様。戦場に出る軍人には、これは仕方のないことです。どうか……気持ちを強くお持ちください」

「っクウェンティン。待って……貴方、いつの間に私の部屋に入って来たの?」

 ベッドでうずくまり泣いていた私は執事クエンティンの姿を見て、とても驚いた。

 ベッド脇のすぐ傍に居たのは、夫アーロンが気に入って重用していたという執事クウェンティン・パロット。

 キーブルグ侯爵邸に務める使用人たちも彼の指示を聞くようにと、当主アーロンより常々聞かされていたそうで、今は優秀な彼を中心にしてこの邸は回っていると言っても過言ではない。