それから言葉を濁したクウェンティンの言わんとしていることを理解して、私はこくりと喉を鳴らした。

 早馬の急使と共に、出征するなんて……余程の緊急事態が起こったんだと、私にも理解することが出来た。

「……わかったわ。今日は確かに残念だけど、仕方ないわね」

 せっかく、アーロンが用意してくれたこの美しいドレスも……すべて、無駄になってしまう。結婚式が途中で中止になったら最後、行われることはないだろう。

 私はドレスの裾を触って、白いドレスとの名残りを惜しんだ。

「奥様。旦那様よりこちらの貴族院に提出する婚姻に関する書類をお届けするようにと、申しつけられております……奥様も、こちらにサインの方をお願いいたします」

 そう言ってクウェンティンは、私に一枚の厚い紙を差し出した。

 それは、本来であれば、式中に宣誓してから、二人でサインするはずの婚姻書類だった……私の名前のみが空欄で、アーロンは先に記入を済ませているようだった。

 あまりの急展開に動揺してしまった私は、なんとか落ち着こうと、何度か息をつき、震える手でそれにサインをした。