「今ならば、ハンナも社交デビュー前で、比較しようにもまだ相手が居ない……だから、どうしてもお前をと縁談を持ち込んだキーブルグ侯爵家に持参金を支払う訳でもなく、こちらがそれなりの金銭を要求し受け取りさえすれば、彼女だって納得するだろう」

 ……それって、私のこの縁談は身売り同然だということ?

 決まり悪く言葉を詰まらせたお父様が、今の状況を冷静に見て、義妹が社交界デビューしてしまえば、ハンナの縁談相手よりも家格の高い男性からの縁談が来たとしても義母が勝手に断るだろうと。

 だから、義母に疎まれている娘の私には、これ以上の相手とは結婚出来る見込みは無いのだと、暗にそう言いたいという訳ね。

 本当に……悲しいくらいに、血の繋がる父含め、家族に大事にされていない。母が亡くなり三年間も続いていて仕方ないと割り切っていたことだけど、私は深くため息をついた。

 母が生きていた頃から、父とは心が離れてしまっていた。けれど、貴族であるからには家の利益も大事だと、いつも自分に言い聞かせて来たというのに。