だから……もしかしたら、お相手はあまり評判の良くない男性なのかもしれない。こうして、警戒心を持って私が考えてしまう事情があった。

 私の父親と義母は、お互いに再婚同士とは言え……伯爵家に高い地位にある公爵家の女性を迎えるなんて、通常ならばあり得ないと言って良い。

 王家の血も受け継ぐ公爵家の義母にとっては、エタンセル伯爵である父は、あまりにも妥協した再婚相手になってしまった。

 再婚によって我がエタンセル伯爵家は、義母の実家ローエングリン公爵家のご縁で、各種特権に与ることが出来るのも事実。

 だからこそ、お父様はお母様の亡き後に一年間の喪明けと同時に申し込まれた格上の公爵家の次女だった義母との再婚話を、エタンセル伯爵家の利益を最優先して受けた。

 お互いに連れ子のある再婚とはいえ、政略結婚だったのだ。

 商売下手で貧乏な伯爵家には願ってもいない好条件の縁談で、断る理由なんて何もなかった。

 だから、前妻の娘である私は、高貴な家の出で高慢な性格の義母から、その代償を、代わりに存分に払わされている。