だから、何故ハンナではなく姉の私の元へと、そんなにも条件の良い縁談が回って来たのかと信じられない思いだった。

 ……私のことをとても嫌っている義母の連れ子、義妹ハンナではなくて、キーブルグ侯爵が望む縁談の相手は本当に私なの?

 父は私に片手をあげて、何もかもわかっていると言わんばかりに頷いた。

「お前が言いたいことは、私とて理解している。ブランシュにはこれまでにエタンセル家のために、随分と苦労をさせてしまった。だから、私はお前はエタンセル伯爵家を出て、幸せになるべきだと思うんだよ」

「……はあ」

 娘の私がどれだけ辛そうでも、何も言わなかった癖に……そんな情のない父に幸せになるべきなどと、とても白々しく聞こえる。

 ……もしかしたら、有り得ないほど良い縁談は、私のことを気に入らないお義母様の差し金なのかもしれない。

 そう疑ってしまうほどに、私の神経はこれまでに擦り切れていた。

 まだ社交界デビューすら済ませておらず、人脈もないので、若くして将軍位にあるというアーロン・キーブルグ侯爵が、どんな男性なのかなんて知らない。