やはり、血を分けた兄弟なのね……アーロンは常にこの弟を殺さなければと言っていたけれど、その理由が、今では私にもわかる。

 ヒルデガードは、もう救われない。どんなに私たちが言葉を重ねたところで、彼は納得しない。

 幸せの定義が違うのだ。血が繋がっていようが、離れるしかない。

 望んでいるものが、根本から違う。自堕落な生活を送りたい浪費家のヒルデガードを養うくらいならば、私たちは領地の税率を下げた方が良いと判断するだろうし、世の中のためだわ。

 殺すか、捕らえるか……二度と会わないように勘当して追放するか。

 先のキーブルグ侯爵は、一番温情ある処置を取ったのね。彼にとっては可愛い息子だもの。当然のことなのかしら。

 けれど、先のキーブルグ侯爵も、アーロンも出来なかったことを、私はここでするわ。

 ……だって、私はキーブルグ侯爵夫人。キーブルグ家の一人だもの。

「黙っていて。アーロン。私に人が殺せないと思っていた? 貴方を守るためならば、いつでも敵を殺せるわ」

 ……そうよ。ヒルデガードを殺したくないと思っていた。それは、すべてアーロンのため。