会えないままな軍神夫からの殺人的な溺愛

 馬車で二時間ほどかかる道のりだけど、アーロンと一緒ならば気詰まりすることもなく、長時間の移動も楽しむことが出来る。

 お母様が亡くなってから、私が失った何もかもを、彼が取り戻してくれたような気がしていた。

「しかし、帳簿を確認して驚いた。ブランシュ」

 馬車に揺られて変わらない風景を写す窓をぼんやり見ていた私に、アーロンは言った。

「自分は生活するのに必要な物以外何も買わずに、仕事ばかりしていたか……クウェンティンは、俺の言うことを聞いていないな」

 私は苦笑した。

 執事クウェンティンは料理人に頼まれたとかで、途中の村で新鮮な海産物を仕入れに行って、今一緒には居ない。

「きっと、クウェンティンはこう言うわ。旦那様には奥様の意向を第一にとお聞きしております。奥様は贅沢な生活は、望まれませんでした……って」

 今ではクウェンティンの無表情や、こちらの話を言葉通りにしか受け止めないという理由が私には理解出来ている。

 彼は裏稼業を営む暗殺者として育てられたから、気持ちの機微がわからずに、そのまま大人になってしまった。