「暗殺者……? クウェンティンが?」

 私は近くに居た執事を見上げた。若くてきっちりと仕事をこなす執事……確かに、無表情が標準で、不思議だった。

 ……まるで、彼には普通の感情がないみたいで……。

「いえ。まだ誰も、殺してませんよ。暗殺者候補だったんです。攫われた子どもたちが、殺す寸前までを訓練するんです」

 さらりと伝えられた言葉に、私は喉が詰まりそうになった。子どもが、攫われて……殺すための技術を学ぶの……?

「殺す寸前で止められるので、クウェンティンは凄いんだ。あんなにも候補者が居たのに、生き残った子は少なかった」

「旦那様。誤解を招くような事を、言わないでください。奥様。僕は誰も殺してません。ですが、旦那様と奥様の命令であれば、仕事と割り切ってさせていただきます」

「駄目よ!」

 暗殺をしたことのない暗殺者候補だったクウェンティンは、仕事であれば別に出来るとあっさり言い放った。

「奥様?」

「殺しては駄目よ。だって、その人にも……私みたいに、あの人さえ死ななければって、思っている人だって居るかもしれないもの」

「ブランシュ……」