「こういうこともあろうかと、旦那様があの赤いドレスを勝手に捨てたお詫びに、奥様が行きつけのあのサロンでドレスを作らせました。よかったら、見られますか?」

「あの、赤いドレス……アーロン、捨ててしまったの?」

 確かにあれを着ていたのを見られた時、彼はひどく怒っていたけど、既に捨ててしまっていたんだ……。

「ええ。ですが、既に代わりのドレスを用意してございますので、問題ないかと」

 合理的な考えのクウェンティンはそう言って、私の衣装部屋から、真新しい青いドレスを持ってきた。

「あ……青いドレスね。素敵」

 私はアーロンが帰ってきたばかりのあの時、色を尋ねた理由をここで知った。

 だから、彼は私の好きな色が知りたかったのだ。

「こちら、揃いの靴と髪飾り、身につける宝石も、全てご準備してございます」

「……早いのね」

 通常であれば一ヶ月、凝ったものであれば数ヶ月もかかりそうな工程なのに、こうして実物を目の当たりにしても信じられない。

 それだけキーブルグ侯爵家の力が、強いのかもしれないけど……。