アーロンは誰とでも、結婚出来る。こんな私には、彼しか居ないのに……。

 枕元のチェストに置かれた手紙に手を伸ばして取って、私は横になったままでそれを開いた。

 体調が悪いと嘘をついていて、カーテンは閉められて薄暗いけれど、彼の男性らしく角張った文字は読むことが出来た。

『体調はいかがですか? ゆっくり休んでください。愛を込めて。アーロン』

 私は馬車の音がしたと思い、窓から外を見た。

 そこにはおそらく、私を気にして仕事中に一旦帰宅したアーロンが居て、窓に居ることに気がつき笑顔で手を振ってくれた。

 驚いた私も小さく手を振って、彼は嬉しそうに微笑むと馬車に乗って仕事に向かった。

 アーロンはきっと体調が悪いと言った私を気にしてくれていたから、部屋の窓を見ていたのだろう。

 だから、私が自分を見ていたことに、気がついてくれた。

 わからない……どうして、アーロンは私に対し、あんなにまで優しいのだろう。

 これまでは、向かい合うことを、逃げてばっかりだった。アーロンと、一度話さなくては。