「奥様。旦那様より、奥様へのお手紙をお預かりしております」

「……わかったわ。置いておいて」

「失礼致します」

 手紙を置いたクウェンティンは、いつも通りな淡々とした調子で、部屋から去って行った。私は彼と夫の話を聞いた昨日から、体調が悪くなったと嘘をつき、ベッドの上で丸まっていた。

 父が再婚してから、義母から使用人同然の生活を強いられても、それは仕方がないことなんだと、私は自分に何度も言い聞かせて来た。

 義母グレースの持つ圧倒的な権力を前に、私はただ生き残るだけで精一杯で、エタンセル伯爵家当主である父だって、彼女と再婚した利益はあれど、自分の身を守ることで懸命になっていたはずだ。

 虐げられていたことを夫アーロンに知られてしまったことが、私には恥ずかしくて堪らなかった。

 家族全員と上手くやれず、一方的に虐待されていたことを知られ、結婚したことを後悔されてしまったのではないかと不安で仕方なかった。

 だって……それは、私にとっては、隠したい汚点だった。