キーブルグ侯爵家のテラスは、日当たりも良く、お茶を飲むには最適な場所だ。

 私が慌ててテラスへ出て行けば、既に椅子に座っていたアーロンが立ち上がった。

「ブランシュ。サムから、花は届いたか」

 背の高いアーロンは私が座ることを手伝い、自分も丸テーブルの正面へ座った。

「ありがとうございます。とても綺麗でした」

「帰って来てから……どうしても気になっていることがあって、それを先に聞きたい。もし、言いたくなかったら良い。その傷は、誰にやられた?」

「……」

 アーロンが私の手の怪我を気になってしまうのも、無理はない。

 私の手は誰がどう見ても鞭に叩かれた傷跡に見えるだろうし、キーブルグ侯爵家で、アーロンの妻である私に対しそんなことをする人は居ない。

「そうか……言いたくないのなら、良い。だが、言ってくれるなら、俺が全て対処する」

「……ありがとうございます。アーロン」

 問い詰められずに安心した私を見て、彼は苦笑して言った。

「悪い。もうひとつだけ、確認だけさせてくれ。それをしでかしたのは、先日追い出した、あの二人ではないよな?」