魔女の呪文

たたみ終わった服をクローゼットにしまいながら母が振り返る。


「その年で不登校なんかになるの、母さん嫌よ」


家にコーラの買い置きがあったから、僕は隣人を訪ねた。部屋のドアを開けて、魔女はニッと口角を上げた。


「気が利くじゃないか」


部屋の奥から甘い焼き菓子の匂いがした。バナナブレッドだ。


「焼きたてだよ。食べるかい?」


今度は僕がニッとする番だった。


僕らは魔女のベランダでピクニックをした。紙コップにコーラを注ぐ。クルミ入りのバナナブレッドは最高だった。リリーは魔女の膝の上で丸くなり、眠そうに目を細めていた。


「ねぇ、ずっと1人なの?」
「リリーがいるさ」
「違うよ、家族はいないの? 孫とか」
「リリーだって家族じゃないか」
「僕が言ってるのは人間のって意味」
「人間はもうこりごりだよ。無駄につるむとろくなことしないじゃないか」
「じゃあ、友達も?」