「アンタのパパとママは『普通』でいたいのさ、自分たちが他人から変人と呼ばれないために、アンタを学校に行かせるんだろうさ」
「僕のためじゃないの?」
「気になるんなら、パパとママに訊いてごらん」


そう言って、魔女は肩をすくめた。


その日の夜、僕は母に何気なさを装って訊いてみた。


「僕、明日から学校行かなくてもいいかな」


洗濯物をたたんでいた母はぎょっとした顔をした。


「何を言っているのよ」
「だって、学校、別に楽しくないし」
「勉強するとこなんだから当たり前でしょ。それとも手の事を誰かにからかわれたの? だったら、母さん学校の先生に言ってあげるわよ」


思わぬ展開に僕は慌てた。


「違うよ」
「友達がいない訳じゃないんでしょ」
「……うん」
「言葉が分からないの? 発音を馬鹿にされる?」
「ちゃんと聞き取れるし、話せる」
「じゃあ、問題ないじゃない」