魔女の呪文

「昔はいたけど、今はいないね」
「寂しくない?」
「ちっとも。アンタはあたしが寂しそうに見えるかい?」
「ううん。全然」
「他人から寂しくみられない様に周りに置いとく友達なんかまっぴらだよ」
「日本には友達百人いるといいなっていう歌があるよ」
「……恐ろしい歌だね」


魔女があまりにも嫌そうに眉を寄せるから僕はふきだした。
それからおもむろに、長袖で隠した左手を見せた。


「僕、左手の小指がないんだ」
「そういやそうだね」
「変?」
「なぜ?」
「皆と一緒じゃないから」


魔女は膝の上のリリーを僕の膝に移した。


「この子はオッドアイだ」
「うん」
「普通の猫とは違う」
「うん」
「どう思う?」
「綺麗だけど」
「じゃあ、アンタのその手も同じさ」


僕は左手を宙に掲げる。
指の隙間からゆっくり白い雲が流れていく。


「きょうは絶好のピクニック日和だねぇ」