駅に着いた時には、すでに構内には不穏な空気が漂っていた。
 ホームズは人混みを見渡し、低く呟いた。




「いるな……モリアーティの手下どもが」




 黒い帽子、長いコート――数人の男たちが、美月の行方を見張っている。




「ワトソン、右から回れ。俺は正面から行く。」

「了解だ。」




二人は同時に動いた。



 その瞬間、敵が気づき、刃物を抜いて襲いかかる。




 金属音が鳴り響き、混乱が広がった。
 ホームズは次々と敵を倒していく。
 だが、後方でワトソンが悲鳴を上げた。



「ぐぁっ……!」



 脇腹を切りつけられ、膝をつくワトソン。



「ワトソン!!」



 ホームズが駆け寄る。




「大丈夫だ……ホームズ、ここは俺に任せろっ!」



「だがっ!!」



 痛みをこらえ、ワトソンはホームズの肩を掴んだ。




「行け、美月を助けろ……お前じゃなきゃ、誰も救えない。」




 ホームズは一瞬迷ったが、ワトソンの目を見て頷いた。



「……必ず戻る!」



 そして、汽笛が鳴り響く。

 汽車がゆっくりと動き出していた。



「ホームズ急げっ!!」

「あぁ!!」




 ホームズは全速力で走り出し、動き出した汽車の最後尾に飛び乗った。


 金属の衝撃音とともに、扉を蹴破って中へ飛び込む。