低い声。
 その声音に、美月の鼓動が跳ねた。
 胸の奥が、じんじんと熱くなる。



「な、なにを言って……」

「“難事件”から逃げるのは、俺の性に合わない。」



 そう言って、ホームズは両手で美月の腕を掴んだ。
 逃がさないように、そっと壁に押さえつける。



「な、何してるんですかっ! ホームズさっ……、んっ!」



その瞬間、唇が重なった。

 柔らかく、そして一瞬。
 けれど、時間が止まったように長く感じた。




 離れたあと、美月は真っ赤な顔で、震える声を出した。





「な、なんで……今の、なんで……?」





 ホームズは息を整えながら、目をそらす。


「……美月、俺はお前を守ると決めた。だから勝手に帰るな。」