それから暫くして、霧のロンドンに、静寂が戻っていた。
ジャック・ザ・リッパーが逮捕されたというニュースは、町の人々の間に安堵と興奮をもたらした。
新聞の見出しには「名探偵ホームズ、恐怖の連続殺人を解決!」と書かれている。
だが、美月の胸には、重たい影が残っていた。
“あの御方は、まだお前をあきらめていない”
あの夜、ジャックにはリッパーが血まみれの手で、冷たく笑いながら残した言葉。
“あの御方”――それが誰なのか、ホームズでさえ掴めていない。
美月は、ホームズの横顔を見つめながら、思った。
――このままでは、私のせいでホームズさんたちが危険に巻き込まれるかもしれない。



