そこへ、ワトソンがかき集めた資料を持って部屋に入ってきた。


 少し真剣な表情で、ホームズに向き合う。

「ホームズ。美月から話は聞いたと思うが、どうやら、ジャックザリッパーは彼女の“出自”を知っているらしいな。」



「あぁ。単なる連続殺人ではない。背後に別の知恵が働いている可能性がある。」


「つまり……リッパーの背後に、美月を知る者が?」

「そうだ。美月の存在を理解している者が、奴と接触しているかもしれん。」

部屋の空気が、重くなった。


 ワトソンは拳を握る。


「だったら、俺も本格的に協力する。美月を守るためにも、事件を終わらせよう。」


 ホームズは短くうなずいた。
 そして視線を、美月へと向ける。


「……美月、まだ怖いかもしれないが、ここにいてくれ。お前がいてくれることで、我々は真実に近付ける。」


美月は胸の奥が温かくなり、笑顔で答えた。



「はい……私、絶対負けません!」



 その笑顔を見て、ホームズの口元がわずかに緩んだ。
 ほんの少しだけ。

 それは、冷徹な探偵ではなく――ただ一人の“青年”の表情だった。