下宿に戻ると、部屋には暖炉の柔らかい火が灯っていた。
ハドスン夫人が紅茶を入れ、美月に差し出す。
「はい、飲んで温まるといいわ。」
「ありがとうございます……」
ホームズは机に地図を広げ、椅子を引いた。
その横顔には、怒りと焦り、そして何か深い思考の色が混じっている。
「怖いかもしれんが、話してくれ。」
「え?」
「ジャックザリッパーの顔、声、そして奴が残した手がかりを――」
美月は小さく息を吸って、震える手で口を開いた。
老女に化けていたこと、突然姿が変わったこと、そして最後に囁かれた“言葉”。



