美月は、ようやくそのことに気づき、ぽろぽろと涙をこぼした。


「……ごめんなさい、ホームズさん……」



 どれくらいそうしていたのだろう。
 短い時間だったのに、永遠のように感じた。
 ホームズの鼓動が、美月の耳に確かに響いていた。

 ――こんなにも、温かい人だったんだ。








「……あー……その……」




 後ろからワトソンの控えめな咳払いが聞こえた。



「「…っ!!」」



二人は同時にびくりと体を離し、顔を真っ赤にする。
 ハドスン夫人は、口元を押さえて笑っていた。


「まぁまぁ、いい光景だこと。」

「えっと!!ち、違うんです!」


 美月が慌てて手を振る。
 ホームズは帽子を深く被り、そっぽを向いたまま「帰るぞ。」とだけ言った。