しばらくして、ワトソンが部屋をのぞいた。


「おや、ようやく目が覚めたか。もう大丈夫かい?」

「ワトソンさん……はい、だいぶ……」



 優しい笑顔に安堵する美月。

 ワトソンはホームズを見やって、からかうように言った。




「この男、君の枕元から一晩中離れなかったんだよ。珍しいことだ。」

「ワトソン!」

 ホームズがむっと眉を寄せる。



美月の顔が一気に赤くなった。

「……本当?」

「誤解するな。ただ、君が寝言で『もう帰りたくない』と呟いて手を離さなかったからだ。」



「えっ……!」


 美月は布団を引き上げて顔を隠した。



「安心しろ。その意味を深く分析するほど、私は無粋ではない。」


「もう分析してるじゃないですか!」



 ワトソンが大笑いする。

「はははっ、仲良くやっているようで何よりだ。」