ホームズは、慣れない手つきでタオルを絞り、そっと美月の額に置く。



 その仕草が少しぎこちなくて、美月は思わず笑った。



「ホームズさんでも、そんなことできるんですね。」

「馬鹿にしてるのか?」

「いえ……なんか、優しいなって。」


ホームズは少しだけ顔をそむけた。


「優しさなど、熱が下がらなければ推理に支障が出るからしているだけだ。」

「……ふふっ。そういう言い方するところが、ホームズさんらしいです」



 窓の外では、霧の向こうに薄い光が差し始めていた。

 暖炉の火がぱちぱちと音を立てる。

 その音に重なるように、美月の胸が静かに高鳴った。