夜が明け、ロンドンの霧はいつもより白く、やわらかかった。


 美月は、重たいまぶたを開ける。




 目の前には、見慣れた天井。
 そして――寝台の横の椅子に、うつむいたまま座るホームズの姿。



「……ホームズさん?」

 かすれた声を聞いた瞬間、彼の目が静かに開いた。




「起きたか、美月」



 いつもの冷静な声。

 けれど、その瞳の奥には、昨夜の雨より深い色が宿っていた。




「……私、どうして……」




「熱を出して倒れたんだ。君の体温は、普通じゃなかった。」