"221B"に戻ると、ハドスン夫人が心配そうに駆け寄った。


「まあ、美月! ずぶ濡れじゃないの!」


「すぐ毛布とスープを」とホームズが短く指示を出す。


 その手際の良さに、夫人は思わず口元を緩めた。



「……あの子のこと、本気で心配してるみたいだね。」



 夫人の目が優しく細まる。



「両想いになるまで、そう時間はかからなさそうだこと。」


暖炉の火がぱちぱちと弾ける。

 その音の中で、美月の寝顔を見つめるホームズの瞳には、これまでにないほどの優しさが宿っていた。