「……放っておいてください。」
 美月は震える声で言った。



「お前が熱を出してるのに、放っておけるわけないだろう。」

「どうせ……私はいずれ帰るんです。そんなの、ホームズさんだってわかってるでしょう!」


 ホームズが息をのむ。


「私だけなんですか!? こんなに――皆の、ホームズさんのそばにいたいと思ってるのは!」


涙と雨が一緒に頬を伝う。



 その瞬間、ホームズの表情が変わった。




「……お前は……」



 美月は顔を伏せる。
 否定できなかった。



 ホームズは静かに彼女をそっと抱きしめた。


「すまない。……私は、君を傷つけた。」


 次の瞬間、美月の身体がぐらりと傾く。
 ホームズはすぐに抱きとめた。


「おい!美月!」

 彼女の体温が高い。
 額に触れると、確かな熱。



 「……すまなかった。」



 ホームズはそのまま、美月をお姫様抱っこして、
 雨の中を真っ直ぐに歩く。