「おい、そこの嬢ちゃん」

 酔った男たちが近づいてきた。

 美月は立ち上がろうとしたが、足に力が入らない。

 体が熱い。


 ――風邪をひいたらしい。



 「やめてくださいっ……!」


 手を振りほどくが、動きが鈍い。




 その瞬間、雨の中から聞き慣れた声が響いた。

「彼女から離れろ。」

 ホームズだった。

 彼の瞳は、暗闇の中でも鋭く光っていた。

 低い声で一言何かを放つと、男たちは慌てて逃げていった。

 「……大丈夫か?」


 駆け寄って、美月の頬に手を当てる。
 冷たい手のひらが、火照った肌に触れた。