ロンドンに着くころ、 ワトソンが目を覚まし、大きく伸びをした。 「いやぁ、実に見事な推理だったな、ホームズ!」 「当然だ。」 「そして、美月もよく頑張った。」 「ありがとうございます、ワトソンさん。」 ホームズは黙って帽子をかぶり直し、馬車を降りる。 霧の中に溶けていく背中。 けれど、その横顔には、 いつもより少しだけ柔らかな光が差していた。