「っ!」

 思わず、息をのんだ。


「ど、どうしてわかったんですか……!?」

「初歩的なことだよ、美月くん。」



 ――その言葉。

 胸の奥で、電気が走ったようだった。



 “初歩的なことだよ、ワトソン君”



 何度も読んだ台詞。
何度も憧れた瞬間。

 それを今、この世界で、本人から言われた。

 私は顔が熱くなるのを感じた。

 たぶん、耳まで真っ赤になってる。

本物が言うとこんなにも迫力があるものなのだろうか。


「どうした? 顔が赤いぞ。」

「な、なんでもないですっ!!」

 そんな私を、ホームズは不思議そうに見つめた。

 ワトソンは、こっそり口元を緩めている。

「ホームズ、彼女も同行させよう。」

「なに?」

「君が気づかないことに、彼女が気づくかもしれない。
 観察眼というのは、論理だけではなく“感情”にも宿るものだ。」