「……チャールズ卿が、伝説の“魔犬”によって命を落としたとされている。」 ワトソンの説明に、私ははっとして手で口を覆う。 まさか、ここで“それ”が始まるなんて――。 話の筋も、結末も、私は全部知っている。 けど、言えない。 私が知っている“物語”を話してしまえば、 この世界の未来を壊してしまうかもしれない。 私は階段の影で、息を潜めたまま拳を握った。