「そういえば、ワトソンさんって、おいくつなんですか?」
ふと気になって、私は尋ねてみた。
ワトソンは少し驚いたように笑い、ティーカップを置いた。
「私は今年で三十歳になるよ。」
「えっ!?」
思わず声が大きくなる。
「そんな……全然見えません! 二十代後半くらいかと……!」
「はは、ありがとう。でも、君の言葉はお世辞じゃなくて本気みたいだね。」
笑顔の奥に、少し照れた表情。
その穏やかな眼差しに、胸がどきりとする。
「ホームズは僕の二つ下だよ。」
ワトソンが私の耳元にそっと顔を寄せ、そう言った。
低い声が、息に混じって耳に触れる。
「二十八歳。」
――その瞬間。
心臓が、どくん、と鳴った。



