ある午後、窓の外では小雨が降っていた。
霧が街を包み、家々の煙突から白い煙が昇る。
私はハドスン夫人の手伝いで紅茶を淹れながら、ぼんやりと湯気を眺めていた。
そんな時、ドアをノックする音がした。
「やぁ美月、ホームズとティータイムをしないかい?」
振り返ると、ワトソンが優しい笑顔で立っていた。
いつもの軍医らしい整ったスーツ姿。
それだけで少し空気が穏やかになるような人。
「ホームズが珍しく、砂糖を二つも入れて紅茶を飲んでいてね。
どうやら仕事が一段落したらしい。君も一緒にどうだい?」
「えっ……わ、私もいいんですか?」
「もちろん。彼も、内心は君が来るのを期待しているだろう。」
「えっ、それは……」
言葉に詰まって、頬が熱くなる。
ワトソンは優しく笑った。
「じゃあ決まりだ。行こう。」
そう言って、私は小さな紅茶ポットを抱えて階段を上がった。
足音が木の床に響く。
胸が少しだけ高鳴る。



