翌朝。
ハドスン夫人の紅茶の香りに包まれながら、ワトソンに呼ばれた。
「ホームズが君に話があるそうだ。」
彼の部屋をノックすると、紙の音とペンの音がした。
机の上には、私のスマホ、学生鞄、そして制服のボタンまで、丁寧に並べられていた。
「ホームズはね、夜な夜なそれを調べていたんだよ。」
ワトソンが笑いながら言った。
「……え?」
「ホームズは、君の言葉を“あり得ない”と言いながらも、ずっと調査していたんだよ。」
ホームズは静かに言った。
「お前の話を、信じてみることにした。」
「えっ……」
「論理的な証拠はない。だが、観察、調査すればするほど、“現代ではない何か”を感じる。」
ホームズが、私のスマホを指先でなぞった。
その指が光を反射して、少し眩しかった。



