「ホームズ、彼女は本気のようだぞ。」
「未来などという非科学的な話、あり得ん。」
「だが、彼女の服も、その装置も……説明がつかないよ。」
ホームズは黙り込んだ。
火の光が彼の横顔を照らす。
その眼差しは、理性と興味のはざまで揺れているようだった。
私は少しだけ勇気を出して、口を開いた。
「……あの、すみません。実は私、行くあてがないんです。」
静かな声でそう言うと、ホームズがすぐに口を挟んだ。
「面倒事はごめんだ。」
「……っ。」
胸がきゅっと痛む。
でもその横で、ワトソンが優しく言った。
「まあまあ、ホームズ。彼女を外に放り出すわけにはいかないだろう。」
そう言って、私に向き直る。
「大丈夫。ハドスン夫人に相談してみよう。何とかなるよ。」
その声がやさしくて、涙が出そうになった。
――あぁ、ワトソン先生だ。小説の中と同じ、あの優しさ。



