けれどワトソンは、やわらかく笑った。
「落ち着いて、美月。冗談だよ。彼は人をからかうのが趣味なんだ。」
「……知ってます。小説で読みました。」
「小説?」
「……あ、いや、なんでもないです!」
ワトソンは不思議そうにしながらも、暖炉の前に私を座らせてくれた。
炎の光が揺れて、部屋の影が踊る。
それがなんだか夢の中みたいに美しかった。
「ところで、美月。」ワトソンが穏やかに言う。
「その手に持っているそれは……?」
「あ、これですか? スマホっていって……」
ホームズがすかさず口を挟む。
「奇妙な装置だ。どこにも歯車もないのに、光るらしい。」
「光りますよ!未来の機械なんです!」
「ほら、やはり“未来”などという。」
「だって本当なんですもん!」
私とホームズのやり取りを見て、ワトソンがくすりと笑う。



