その日の夜。



事件(?)も無事解決し、アーサーはすやすやと眠っている。



紅茶の香りが漂うリビングで、私はようやく息をついた。



ホームズは書斎から戻ると、無言で小さな箱をテーブルに置いた。



「美月、これを。」



「え? なになに?」



リボンのついた小箱。


恐る恐る開けると――


中には、昼間商店街で見たあの綺麗な花のバレッタが入っていた。




「こ、これ……どうして?!」



「欲しかったんだろう?」




ホームズは淡々と紅茶を口にしながら言う。


まるで、“推理の結果”を告げるような口調だった。




「み、見てたんですか?!」


「探すついでに、視界に入っただけだ。」


「ついでって……!」




頬が思わず緩む。



あのとき、あきらめたはずの小さな願いを、ちゃんと見てくれていた――



それだけで胸があたたかくなる。