ロンドンの昼下がり。



青空の下、石畳の通りには活気ある声が響いていた。

「アーサー、あんまり走っちゃダメよ!」


「はーい! でもねママ、こっちに美味しそうな匂いがするよ!」




五歳の息子、美月とホームズの愛息アーサー。


茶色の髪が陽光にきらめいて、笑うと目元が美月にそっくり。


だけどあの真っ直ぐな瞳と底知れない探求心は、きっとホームズに似たのだと思う。




「まったく……ホームズさんに似て、じっとしていられないんだから。」


「お嬢さん、息子さん元気だねぇ。」


商店街の店主が笑いながら声をかけてくる。


その隣の棚で、私はふと――
キラリと光るバレッタを見つけた。


「わぁ、綺麗……!」


花の形をした繊細な細工。



少しだけ、未来の世界を思い出すような、美しいものだった。




「お嬢さん、似合うよ。半額にしておくからどうだい?」



「い、いえ、そんな……贅沢はできませんから……」



そう言って微笑みながら断った――そのほんの数秒。



「あれ?……アーサー?」