結婚してもう五年。



ロンドンの午後はいつも通り、紅茶の香りに包まれている。



ホームズさんはソファに座り、新聞を広げながら煙草をくゆらせ、
私はその横でティーカップを磨いていた。



……けれど今日は、どうしても気になることがあったのだ。






「ねぇ、ホームズさん!」

「なんだ?」

「ホームズさんって、いつから私のこと好きだったんですか?」





新聞がピタッと止まった。


顔を上げたホームズさんの表情は、まさに“動揺を完璧に隠そうとする男”そのもの。





「……………突然、何を言い出すんだ。」






あ、これ。



困ってる時のホームズさんの顔だ。

眉の角度がほんの少し下がるの、私は見逃さない。




「えー、気になるじゃないですかぁ。」



「推理してみろ。」




「そういうのいいですっ! 答えが知りたいんです!」





拗ねた私をチラッと見て、ホームズさんはフッと笑う。



……笑った! 絶対ごまかしてる!!