ベイカーストリートの穏やかな昼下がり。
外では春の風が軽やかに吹き、窓から射す光がリビングをあたたかく包み込んでいた。
「アーサー、ごはんできたわよ〜!」
キッチンから美月の明るい声が響く。
五年前、名探偵シャーロック・ホームズと美月が結婚してから、
この家には笑い声が絶えなくなった。
そして今では――二人の愛の結晶、息子のアーサーが元気いっぱいに走り回っている。
「はーい!」
アーサーはくるくるした栗色の髪を揺らしながら駆けてきた。
その瞳は美月譲りの大きく優しい目。
けれども、表情や話し方は驚くほどホームズに似ていた。



