秋の午後、ロンドンの空は灰色の雲をゆっくりと流していた。


 ベイカー街221Bの窓際には、湯気を立てるティーカップ。


 その隣で、美月はカーテン越しの光を浴びながら、ソファに腰かけて本を読んでいた。



――二十歳になった美月。



 あの頃より少し背が伸び、瞳の奥には大人びた落ち着きが宿っている。



 けれど笑うと、やっぱりあの無邪気な少女のままだ。



「……そんなに見つめられると、照れますよ、ホームズさん。」



 ページをめくりながら美月が言う。