その一言が、彼の心の奥に、確かな音を立てて響いた。
ホームズは、驚きのあまり言葉を失う。
やっとの思いで口を開いたが――
「……科学的に証明できない。あり得ない……幻覚かもしれん。」
その理屈っぽい言葉に、美月はくすっと笑った。
「おや? 私の愛しいホームズさんはどこに行ったんだ?」
その瞬間、ホームズの理性が弾けた。
彼は勢いよく美月を抱きしめた。
腕の中に、確かな温もりがある。
幻でも、夢でもない。
美月は、懐かしいその体温に身を寄せた。
ふわりとホームズの香りが鼻先をくすぐる。
「ホームズさん……やっぱり温かいですね。」
ワトソンとハドスン夫人は、二人を見て目を細めた。



