“ホームズさん、ありがとう。あなたに出会えてよかった。”



 彼はそっと、手の中の布を握りしめる。
 それは、もう涙ではなく、微笑みに変わっていた。



「――さらばだ、美月。
 そして、ありがとう。」




 青い空の向こうへ、白い霧が消えていった。
 ホームズの心に、静かに新しい朝が訪れようとしていた。