――そうだ。

 美月は、俺を守った。
 命を懸けて。
 この未来を、託した。


 「……ああ、そうだな……」
 ホームズは立ち上がった。
 その目には、再び決意の炎が宿っていた。


「彼女が守った命を、無駄にはできない。」


ワトソンがうなずく。
「それでこそ、ホームズだ。」



 二人は視線を交わし、すぐに行動を開始した。


 ワトソンは血を押さえながらも、懸命に汽車の後部へ走る。


 ホームズは懐から工具を取り出し、連結部分へ取りかかる。


「時間がない! あと数分でカーブに入る!」



 「わかっている!」




鉄の匂い、焦げた油の煙、車輪のきしみ。
 ホームズの手が震える。だが止まらない。
 ネジを外し、留め具を外し、最後のピンを抜く――



 ガチャンッ!!



 金属音が響き、前方車両が切り離された。
 ホームズとワトソンのいる後部車両が速度を落としていく。

 「成功だ……!」